
戦略的トラブルシュート - DECSARメソッドとは -
はじめに
こんにちは株式会社TIELECのタカシユウトです。
この記事では戦略的トラブルシュートの方法論であるDECSARメソッドの紹介をします。
インフラ運用者の皆様、トラブルシュートって大変ですよね。DECSARメソッドはトラブルシュートのやり方をアカデミックの視点から体系的に整理した戦略論です。トラブルシューティングのやり方に悩んでいるという方、ぜひこちらの記事をご覧ください。
2026年1月更新:実際のJenkins EFS障害対応を実践例として追加しました。
DECSARメソッド
DECSARメソッドとは
DECSARメソッドは6つのステップで構成されるトラブルシューティング方法です。トラブルシューティングの方法を学生に効果的に学習してもらうための標準化された手法としてCraig Ross氏とR. Robert Orr氏により考案されました。
DECSARメソッドは6つのステップ
Definingthe problem 問題定義Examinethe Situation 状況調査- Consider the
Causes原因分析 - Consider the
Solutions対応方針の検討 Actand Test 実行と検証ReviewTroubleshooting 振り返り

これらをステップの頭文字がDECSAR です。
それぞれについて具体的に解説します。
Defining the problem 問題定義
最初のステップではまず問題を定義し、トラブルシューティングの担当者は効果的な解決策を見つけるきっかけを最大化にするためにシステムの誤動作の原因を慎重に検討するようにします。
Examine the Situation 状況調査
第2ステップである状況調査では、トラブルシューティングの担当者がシステムについて全体について観測し、正常に動作しているものとそうでないものの両方に注意を払い観測し、後から振り返れるように記録を残します。
Consider the Causes 原因分析
第3ステップでは、問題の原因を検討し、トラブルシューティングの担当者がシステム障害の原因として考えられる理由を複数提示、問題の原因である可能性に応じてそれらを順位付けする必要があります。
Consider the Solutions 対応方針の検討
第4のステップでは、問題の解決策を検討し、原因分析と同じように対応の順位付けを行います。また、最初に試した解決策が失敗した場合に備えて、別のトラブルシューティングの実行方法がある確認します。
Act and Test 実行と検証
次のステップである実行と検証では、解決策が実行され、有効性を検証します。このとき状況調査で確認した内容と解決策実行後の結果を比較します。
Review Troubleshooting 振り返り
最後に、システムが修復されたら、トラブルシューティングの担当者は今後の対応をより円滑に行えるようにするためにシステムについてより理解を深めるように努めます。
実践例: Jenkins EFS問題での完全なプロセス
DECSARメソッドが実際の障害対応でどのように機能するか、2026年1月に発生したJenkins EFS問題を例に解説します。
問題の概要
月曜の朝、Jenkinsが重くなり、Gitクローンが失敗し、504エラーが頻発しました。約3日間の調査と対応を経て、根本原因を特定し、恒久対応を実施しました。
DECSARメソッドの各ステップ
1. Defining - 問題定義
何が起きたか: 「なんか重い」という漠然とした認識から、「Jenkins全体が重く、Git操作が失敗する」という具体的な問題定義に絞り込みました。
ポイント: 複数の症状(重い、エラー、タイムアウト)を観察し、共通する問題を特定しました。
2. Examine - 状況調査
観測した内容:
- EC2のCPU使用率:通常0-5%(異常なし)
- ネットワークI/O:異常なし
- EFSスループット利用率:100%に達するスパイクが頻発(決定的な証拠)
- EFSストレージ容量:14GB → 17GB程度に増加
ポイント: CloudWatchメトリクスを網羅的に確認し、正常な部分と異常な部分を記録しました。
3. Consider the Causes - 原因分析
仮説の変遷:
- 当初の仮説:ネットワークの一時的な問題
- 調査が進むと:
tmp_pack_*(Git一時ファイル)が約15GB蓄積 - さらに深掘り:Burst Credit Balanceのグラフから、問題は1/26に顕在化したが、根本原因は1/13にあった
最終的な原因(複合的):
- Shared Libraryのキャッシュが無効化されていた(主犯)
- 使い捨てエージェント方式への変更(1/13、複合要因)
- 年始の開発加速(ビルド回数増加)
ポイント: 表面的な症状だけでなく、グラフを時系列で分析することで真の根本原因に辿り着きました。
4. Consider the Solutions - 対応方針の検討
検討した解決策と判断:
| 解決策 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| バーストモード継続 | ❌ | クレジット枯渇で調査困難 |
| プロビジョンド 300 MiB/s | ⚠️ 緊急対応 | 高コスト($69/26時間)だが調査を継続できる |
| Elastic Throughput | ⚠️ 一時的 | 意外とコスト高($8/日) |
| Shared Libraryキャッシュ有効化 | ✅ 恒久対応 | 根本解決 |
ポイント: 緊急対応から恒久対応まで、複数の選択肢を検討し、トレードオフを明確にしました。
5. Act and Test - 実行と検証
実行した対応: Shared Libraryのキャッシュを有効化(Refresh time: 180分)
結果:
- 対策前: スループット利用率が100%に達するスパイクが頻発
- 対策後: スループット利用率がほぼ0%で安定、3時間ごとに規則的な小さなスパイク(設定通り)
ポイント: 状況調査で記録したメトリクスと対策後の結果を比較し、効果を定量的に検証しました。
6. Review - 振り返り
技術的な学び:
- EFSメタデータIOPSの特性
- Jenkinsキャッシュの仕組み
- スループットモードの選択
プロセスとしての学び:
- 緊急時の判断(完璧な情報がなくても決断する)
- 調査のアプローチ(グラフを時系列で見る)
- 説明責任(判断プロセスを言語化し、失敗も含めて共有)
今後の対応:
- 監視体制の強化(EFSスループット利用率 > 75%でアラート)
- バーストモードへの復帰計画
- クリーンアップジョブの継続運用
ポイント: 問題を解決して終わりではなく、組織全体の知見として言語化し、再発防止策を実装しました。
詳細な経緯
この一連の対応の詳細は、以下の4部作で解説しています:
- JenkinsがじわじわGitクローンできなくなっていった話 - 問題発見と応急処置
- プロビジョンドスループットで1万円使った反省 - コストとの向き合い方
- 続・JenkinsとEFS ― 問題の発火は1/26、でも根本原因は1/13にあった - 根本原因の発見
- SREの仕事 ― 問題発見から恒久対応、そして結果観察まで - 最終報告と振り返り
まとめ
いかがでしたでしょうか。改めて内容をまとめますと次のようになります。
DECSARメソッドは6つのステップで構成されるトラブルシューティング方法で以下のステップから構成される。
Definingthe problem 問題定義Examinethe Situation 状況調査- Consider the
Causes原因分析 - Consider the
Solutions対応方針の検討 Actand Test 実行と検証ReviewTroubleshooting 振り返り
トラブルシューティング・スキルは、ITプロフェッショナルにとって不可欠なスキルですが、抽象的で難しいと考えている方も多くいるかと思います。
まずは、このDECSARメソッドの考えを取り入れてトラブルシュートの指標にしてみてはいかがでしょうか?
実際の障害対応においても、このフレームワークを意識することで、問題の全体像を把握しやすくなり、効果的な解決策を見つけられるようになります。
関連書籍
トラブルシューティングやSREについてさらに学びたい方におすすめの書籍です。
参考
- Teaching structured troubleshooting: Integrating a standard methodology into an information technology program
- Training in Troubleshooting Problem-Solving: Preparing Undergraduate Engineering Students for Industry
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