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    仕事と生活を分けない働き方 ― 8時間労働を問い直す
    思考の砂場
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    仕事と生活を分けない働き方 ― 8時間労働を問い直す

    タカシ ユウト/ TIELEC代表
    11 分で読める

    子どもが生まれてから、働き方が変わりました。

    在宅で働いていると、どうしても細切れになります。子どもが昼寝している間に集中して、起きたら手を止めて、また寝たら再開する。8時間まとめて働くなんて、物理的に難しい日も多いです。

    そんな生活を続けているうちに、ふと考えるようになりました。

    週5日、1日8時間。これが「普通の働き方」とされています。でも、なぜ8時間なのか。なぜ週5日なのか。 そこに明確な理由があるのかと問われると、うまく答えられません。

    たとえば、週7日働くけど1日5〜6時間で終わる働き方があったとしたら、それは「不健康」なのでしょうか。

    週5日×8時間は40時間。週7日×5.5時間は約38時間。総労働時間はほとんど変わりません。 むしろ後者の方が少ないくらいです。

    今の自分の働き方

    今はリモートワークで働いています。1日8時間・週5日という枠組みは同じですが、出社していた頃とは感覚がだいぶ違います。

    朝は目覚ましをかけていません。十分に寝て、自然に起きてから仕事を始めます。

    午後に疲れたら、少し横になります。15分でも寝ると、頭がスッキリして午後の効率が全然違います。煮詰まったときにシャワーを浴びたり、風呂に入ったりすることもあります。そうすると、不思議と解決策が浮かんだりします。

    出社していた頃には考えられなかったことです。でも、これで成果が出ているなら、何も問題はないはずです。

    回復は「まとまった休日」じゃないと得られないのか

    週末にまとめて休むことで、平日の疲れをリセットする。多くの人がそうしていると思います。自分もそうでした。

    ただ、最近思うのは、本当の回復は「毎日の余白」にあるのではないか、ということです。

    出社していた頃は、1日8時間働いて、通勤を含めれば10〜12時間拘束されていました。平日の夜にできることは限られていて、週末に回復しようとしても完全には戻らない。月曜の朝、また疲れた状態で始まる。そんなサイクルを繰り返していました。

    リモートワークになってから、通勤時間がなくなった分、毎日の余白が増えました。疲れたら休む。眠かったら寝る。それだけで、平日の疲れ方がかなり変わりました。

    もし毎日5〜6時間で仕事が終わるなら、午後の4〜5時間は自由になります。運動してもいい。本を読んでもいい。子どもと遊んでもいい。毎日がハーフ休日のようなものです。

    「週に1日、完全に仕事から離れる日が必要」という考え方もあります。でも、毎日十分な自由時間と睡眠が確保できていれば、まとまった休日がなくても回復できるのかもしれません。そのあたりの答えは、正直まだ自分の中でも出ていません。

    仕事と生活を「分ける」のではなく

    「ワークライフバランス」という言葉があります。仕事と生活のバランスを取る、という考え方です。

    でも最近思うのは、そもそも仕事と生活を「分ける」という前提自体が、自分には合っていないのかもしれない、ということです。

    子どもの世話をしながら、合間に仕事をする。仕事の合間に、昼寝をしたり風呂に入ったりする。仕事と生活が混ざり合っている状態です。

    これは「バランスが取れていない」のではなく、そもそも分けていないだけです。

    朝6時に起きて、朝食を食べて、昼まで働く。それで終わり。午後からは自由。そんな働き方も、不可能ではありません。

    起床後2〜4時間は、脳の集中力が最も高い時間帯だと言われています。そのゴールデンタイムに仕事を終わらせて、あとは休む。 理にかなっている気がします。

    作家のヘミングウェイは、朝6時から正午まで書いて、それで1日の仕事を終えていたそうです。創造的な仕事をする人には、こうしたスタイルを取る人が少なくありません。

    仕事と生活を分けて、それぞれの時間を確保する。それも一つのやり方です。でも、分けずに溶け合わせる方が自然な人もいます。自分は後者なのかもしれない、と最近は思っています。

    エンジニアの仕事は、工場労働とは違う

    自分はITエンジニアとして働いてきました。その経験から思うのは、今の「8時間オフィスにいる」という働き方は、エンジニアの仕事の性質に合っていないのではないか、ということです。

    工場労働であれば、8時間機械を動かせば8時間分の生産が得られます。人がいないと生産が止まります。時間と成果が比例します。

    でも、エンジニアの仕事はそうではありません。

    8時間デスクに座っていても、集中できなければ成果はゼロに近いです。逆に、ゾーンに入った2時間で1週間分の進捗が出ることもあります。時間と成果は比例しません。

    バグが解けなくて煮詰まったとき、散歩したり昼寝したりした方がひらめくことは多いです。お風呂に入ってぼーっとしているときに、ふと解決策が浮かぶこともあります。

    これは脳科学的にも説明がつくそうです。意識的に考えるのをやめたとき、脳の「デフォルトモードネットワーク」という領域が働いて、バックグラウンドで情報を整理してくれます。休んでいる時間も、脳は仕事を続けています。

    つまり、「休む」は仕事の一部なんです。

    頭が回らない状態でコードを書いても、あとで見返すとバグだらけだったりします。それなら30分寝て、スッキリした頭で1時間書いた方が、品質も速度も上がります。

    でも従来の働き方だと、昼寝していたら「サボり」と見なされます。この評価基準がそもそもおかしいんじゃないか、と思うことがあります。

    他の仕事にも言えること

    こうした話は、エンジニアに限った話ではないと思います。

    デザイナー、ライター、作曲家、映像制作。インスピレーションや集中力が成果を左右する仕事は、疲れた状態で作業しても良いものは出ません。

    研究者、データサイエンティスト、アナリスト。複雑な問題を考える仕事は、頭がクリアなときにやらないと意味がありません。

    マーケター、コンサルタント、プロデューサー。アイデアや判断が価値の中心にある仕事は、長時間いても頭が働かなければ無駄になります。

    逆に、接客、医療現場、製造ライン、物流など、「その場にいること」自体が価値を生む仕事は、時間ベースにならざるを得ません。それはそれで必要なことです。

    ただ、「成果物で評価できる仕事」については、柔軟な働き方の方が合っているのではないでしょうか。少なくとも、全員一律で8時間拘束する必要はないように思えます。

    なぜ、変わらないのか

    産業革命の時代に生まれた働き方が、なぜ今も続いているのか。

    いくつか理由はあると思います。

    「成果」を正確に評価するのは難しいです。人によって仕事の内容も違うし、成果が見えるまでに時間がかかる仕事もあります。それに比べて「9時に来たか」は誰でも判断できます。時間で管理する方が、シンプルで分かりやすいのは確かです。

    制度の問題もあります。労働基準法、残業代、社会保険。すべて「労働時間」が基準になっています。成果ベースに移行しようとすると、法律や制度との整合性が複雑になります。

    ただ、時間で管理することには良い面もあります。

    「成果を出せばいつ働いてもいい」という環境だと、逆に働きすぎてしまう人もいます。終わりが見えなくて、いつまでも仕事を続けてしまう。時間で区切ることで、働きすぎを防いでいる面はあるのだと思います。

    一律のルールがあることで、安心できる人もいます。「何時から何時まで働けばいい」と決まっていれば、それ以外の時間は考えなくていい。自由度が高いと、逆に不安になる人もいるのかもしれません。

    だから、今の働き方が「間違っている」とは言い切れません。合っている人もいれば、合っていない人もいる。 自分には合っていないかもしれない、というだけのことです。

    違う働き方をしている会社もある

    こうした働き方を、会社として実践しているところもあります。

    GitLabは、世界60カ国以上に2,000人以上の社員がいる会社ですが、オフィスを持っていません。全員がリモートで働いています。勤務時間も決まっていなくて、いつ働くかは本人が決めます。評価は「働いた時間」ではなく「成果」で行われます。

    非同期のコミュニケーションを重視していて、すぐに返事がなくても問題ないという文化があるそうです。会議を減らして、ドキュメントに残すことを大事にしている。だから時差があっても、自分のペースで働けます。

    37signals(Basecamp)という会社も、創業当初からリモートワークを取り入れています。「Remote」という本を書いて、リモートワークの考え方を広めた会社でもあります。夏の間は週4日勤務になるそうです。

    興味深いのは、こうした会社では「サボりをどう防ぐか」よりも「働きすぎをどう防ぐか」が課題になっているということです。自由度が高いと、逆に終わりが見えなくて働きすぎてしまう人もいる。だから、あえて制限を設けている面もあるようです。

    こういう会社が存在しているということは、別の働き方も成り立つということだと思います。全員に合うわけではないけれど、選択肢としてはあります。

    問いを持ち続けること

    この文章を書きながら、答えが出たわけではありません。

    8時間労働がすべて悪いとは思いません。それで心地よく働けている人もいます。週末にまとめて休む方が切り替えやすい人もいます。仕事と生活をきっちり分けたい人もいます。

    自分自身、今の働き方に大きな不満があるわけではありません。会社員だった頃に比べたら、ずっと良くなりました。でも、もっと最適な働き方があるかもしれない、とも思っています。

    なぜ8時間なのか。なぜ週5日なのか。仕事と生活は分けるべきなのか、混ぜてもいいのか。

    その問いを持ち続けることで、自分に合った働き方が少しずつ見えてくるのかもしれません。

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