まとまりのない文章になるかもしれません。
でも、自分の中で起きた「つながる感覚」をちゃんと残しておきたくて書いています。
きっかけは、たまたまテレビで流れていたJリーグのシーズン移行のニュースでした。「へえ、変わるんだ」くらいの温度感だったのですが、少し調べてみたら思いのほか深い話で、気づいたら数時間、いろんなことを考えていました。
この記事では、一つのニュースから芋づる式に広がっていった思考の流れを、そのまま記録として残しておこうと思います。
シーズンが変わる、という事実
まず前提の整理です。
Jリーグは2026-27シーズンから、これまでの「春秋制」(2月開幕→12月閉幕)を「秋春制」(8月開幕→翌年5〜6月閉幕)に移行します。欧州のリーグと同じカレンダーになるということです。
最初は「ふーん、欧州に合わせるのね」くらいにしか思わなかったのですが、「なぜ今このタイミングで?」「それによって何が変わるの?」と掘り下げていくと、思った以上にいろんなものが絡み合っていました。
「なぜ変えるのか」を追いかけたら、経済の話になった
シーズン移行の理由を調べると、いくつか出てきます。
欧州の移籍マーケットとシーズンを合わせることで移籍金収益を拡大できること。ACL(アジアチャンピオンズリーグ)とのシーズンのズレが解消されること。酷暑期の試合数を減らせること。
どれも合理的です。でも僕が「おっ」と思ったのは、その先にある数字でした。
Jリーグは「次の10年で全クラブの売上を1.5〜2倍にする」という目標を掲げています。2024年度の全体売上高(60クラブ合計)が約1,725億円。それを2033年度に2,250〜3,000億円にするという計画です。一方で、移行期には43億円の赤字を見込み、降雪地域への支援に100億円規模の投資が必要とされている。
つまりシーズン移行は、短期的にはかなりの痛みを伴う意思決定なわけです。それでもやる。「いつかプラスになるはず」ではなく、明確な数値目標を置いて、覚悟を持って踏み切っている。ここに、ちょっとした迫力を感じました。
野球との関係から見えてきた「すみ分け」の発想
次に気になったのは、プロ野球との関係です。
これまでの春秋制だと、プロ野球(3月末〜10月)とJリーグ(2月〜12月)はほぼ丸かぶりでした。スポンサー、メディアの注目、ファンの時間やお金——限られたリソースを同じ時期に奪い合う構図です。
秋春制に移行すると、野球のオフシーズンにもリーグ戦が行われるようになる。完全にずれるわけではないですが、ピーク時期が分散される。ここで「なるほど」と思ったのは、これは「競合を避ける」という消極的な話ではなくて、「日本のスポーツ市場全体のパイを大きくする」という発想に近いということです。
そしてNPBとJリーグの関係を調べてみると、実際に「対立」というよりは「日本スポーツ界の両輪」という位置づけであることがわかりました。コロナ禍では共同で対策連絡会議を設立し、68回にわたる会議を重ねている。「プロ野球とJリーグは、日本におけるスポーツ文化の両輪です」という共同メッセージも出されています。
奪い合いではなく、共存。このあたりから、僕の関心は「スポーツビジネスの構造」そのものに移っていきました。
アメリカと欧州、二つのモデル
ここからが、個人的に一番面白かったところです。
アメリカの4大リーグ(NFL・MLB・NBA・NHL)は、シーズンが絶妙にずれています。それぞれの「最盛期」が分散しているので、年間を通じて常に何かの大きなシーズンがある。しかもNFLのスーパーボウル(2月)、MLBのワールドシリーズ(10月)、NBAファイナル(6月)と、クライマックスまで見事にばらけている。
さらに面白いのが、同じオーナーが複数リーグのチームを持っているケースがかなり多いこと。これが「対立」ではなく「共存」を促す構造的な要因にもなっている。
一方、欧州はどうか。欧州のスポーツ経済は、サッカーがほぼ一強です。欧州サッカー市場は2023/24シーズンに380億ユーロ(約6兆円)。他のスポーツ——F1、ラグビー、テニス——も存在しますが、経済規模の差が桁違いです。
なぜこうなるかというと、欧州は国ごとにサッカーリーグがあり、さらにチャンピオンズリーグで国を超えて競い合う二層構造がある。加えて昇降格制で地域のクラブが草の根から組み込まれているため、文化的に非常に根深い。他のスポーツが入り込む余地がほとんどないわけです。
ここまで来て、はっと気づきました。
日本は、この二つのモデルが一つの国の中に共存している。
NPB(プロ野球)はアメリカ型のフランチャイズ制。昇降格なし、球団数は固定、企業名がチーム名。安定と投資保護の思想です。
Jリーグは欧州型の昇降格制。地域名がクラブ名、ホームタウン制、10クラブから60クラブへの拡大。競争と地域拡大の思想です。
これは偶然そうなったわけではありません。
各国のスポーツビジネスの構造的な違いについてさらに深く知りたい方には、以下の書籍が参考になります。
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設計思想の違い、という視点
NPBが閉鎖型になったのは、野球がアメリカから輸入されたスポーツだからという歴史的経緯があります。親会社の企業名がチーム名になる「企業スポーツ」の形態で、投資を保護するために降格リスクを排除した。
一方、Jリーグの初代チェアマン川淵三郎氏は、まさにNPBの「反面教師」として設計したと言われています。親会社の経営が傾けばチームが消滅するリスク、企業名による地域との結びつきの弱さ。そこに問題意識を持ち、「百年構想」——100年続くスポーツ文化を地域に根付かせるというビジョンを掲げた。
昇降格制度を入れたのも、明確な思想があります。トップリーグの枠を閉じてしまうと、地方の小さなクラブが「上を目指す」夢を持てない。昇降格があれば、J3のクラブでもJ1に上がれる可能性がある。これが全国にサッカー文化を広げる原動力になる、という設計です。
正直ここで唸りました。
どちらが正解ということではなく、「何を大事にするか」から逆算して仕組みを設計している。NPBは「安定した興行」を、Jリーグは「地域に根ざしたスポーツ文化の拡大」を。それぞれの設計思想が、リーグの形をつくっている。
川淵三郎氏がJリーグを設計した背景と、その思想の全体像については、こちらの書籍で詳しく知ることができます。
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百年構想リーグ——名前に込められた意味
ここでもう一つ、つながった瞬間がありました。
シーズン移行に伴い、2026年前半に一度限りの特別大会が開催されます。その名前が「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」。
最初に聞いたときは「ふーん」くらいだったのですが、ここまでの文脈を踏まえると、この名前にかなりの意図が込められていることがわかります。30年間続いた春秋制を捨てるという歴史的な転換点に、あえて原点の理念を冠している。「単なるカレンダー変更ではなく、次の100年に向けた進化なんだ」というメッセージです。
しかも大会形式も百年構想の精神と整合していて、J1だけでなくJ2・J3の全60クラブが参加し、東西の地域ブロックに分かれて戦う。「地域に根ざす」という思想がそのまま大会設計に反映されている。
一つのニュースを追いかけていたら、設立当初からの思想、モデルの選択、経営戦略が全部地続きだった。パズルのピースがカチッとはまるような感覚でした。
百年構想が描く「スポーツ文化が国の成り立ちを変える」というビジョンについては、この書籍が詳しく語っています。
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Jリーグが描く三層構造
最終的に見えてきたのは、Jリーグが描いている世界観の三層構造です。
第一の層は「世界と戦えるリーグになること」。 シーズン移行による欧州との接続、移籍金収入の拡大、ACLやクラブW杯への本格参戦。経済的な戦略の層です。
第二の層は「地域から世界への循環」。 地域に愛されるクラブがあるからこそ選手が育ち、スポンサーが集まり、世界で戦える。世界で戦った成果が地域に還元され、さらにクラブが発展する。この循環の層です。
第三の層は「サッカーを超えたスポーツ文化のインフラ」。 百年構想が最終的に目指しているのは、サッカーリーグの成功そのものではなく、サッカーを入口にして全国に地域スポーツクラブの文化を根付かせること。社会変革の層です。
シーズン移行はその中の「世界と戦う」部分のピース。百年構想リーグはその転換点を象徴する大会。そしてその先にあるのは、スポーツを通じた社会のあり方そのものの話です。
この探究から何を持ち帰るか
正直、サッカーに特別詳しいわけではありません。でも今回の探究で強く感じたのは、一つのニュースの「なぜ」を掘り下げていくと、その裏にある設計思想に必ずたどり着くということです。
シーズンが変わる → なぜ → 経済的合理性 → でもそれだけじゃない → 構造の違い → 思想の違い → 百年単位のビジョン。
この芋づる式の探究そのものが、自分にとっては学びでした。ニュースを「ふーん」で流さずに、一つだけ「なぜ」を足してみる。そうすると、見えてくる景色がまったく変わる。
そして、NPBとJリーグという二つのモデルが同じ国の中で共存しているという事実。アメリカ型の安定と、欧州型の競争。どちらが正しいという話ではなく、「何を大事にするか」が先にあって、仕組みはその結果として生まれている。
この「設計思想が先、仕組みは後」という順序は、スポーツに限らず、いろんな場面で通じる話なのかもしれません。
みなさんは、最近「ふーん」で流したニュース、ありますか?
一つだけ「なぜ」を足してみると、意外な景色が見えてくるかもしれません。
参考URL
- 【公式】2026-27シーズンからのシーズン移行について - Jリーグ
- Jリーグ 2025年度事業計画書(売上目標 2,250〜3,000億円等)
- 2024年度 クラブ経営情報開示資料(本発表)- Jリーグ
- Jリーグ2026シーズンは何が変わる? - Goal.com 日本
- NPBとJリーグが異例のタッグを組む。コロナウイルス対策連絡会議会見レポート - Jリーグ公式
- 新型コロナウイルス感染対応の総括を報告(68回をもって定期開催終了)- Jリーグ公式
- NPB 新型コロナウイルス対応総括(2020年〜2022年)
- Deloitte Annual Review of Football Finance 2025: European football market €38 billion
- Jリーグ秋春制 - Wikipedia
- 沿革 | Jリーグについて - Jリーグ公式
- Jリーグクラブ経営ガイド 2025