パッケージの住所変更に気づいた

たまたま食べていたベースブレッドのパッケージを裏返したとき、ふと気づきました。

販売者の住所が「神奈川県座間市」になっている。

「あれ、ベースフードって確か東京の会社だったような…」

気になって調べてみると、以前は東京都目黒区と記載されていたことがわかりました。本社移転かな、と思ったのですが、公式サイトを見ると本社登記は依然として目黒区のまま。

正直、最初は単なる物流拠点の変更かと思っていました。

でも、「なぜわざわざパッケージの住所を変えたのか」「座間市である理由は何か」という疑問が頭から離れず、これも何かの縁だと思い、深掘りしてみることにしました。

そこから始まった調査が、思いのほか深く、面白い発見の連続だったので記録として残しておきます。

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物流拠点最適化という戦略

調べてみると、ベースフードは2021年に東西2拠点体制を確立していました。

パッケージに記載されているのは、実際に商品が発送される物流拠点の住所。つまり、本社オフィスではなく、「ここから商品が送られている」という実態を示しているわけです。

そして、この2拠点体制によって年間1,000万円以上の配送費削減を実現したとのこと。

ここで疑問が湧きました。

「どうやって座間と京都が最適だと判断したのか?」

一般的に、物流拠点の最適化には外部コンサルを使うケースが多いようです。例えば、三菱ケミカルエンジニアリングやPwCといった企業が、拠点配置のシミュレーションやコンサルティングを提供しています。

コストも相応にかかります。調べた限りでは:

しかし、ベースフードの場合、後述しますがこの分析を内製化していた可能性が高い。

ここに興味が湧いてきました。

LOGILESSという存在

さらに調べを進めると、LOGILESS(ロジレス) というシステムの存在を知りました。

ベースフードは2019年にLOGILESSを導入しています。

LOGILESSは、OMS(受注管理システム)とWMS(倉庫管理システム)を一体化したEC自動出荷システム。従来、EC事業者と倉庫事業者は別々のシステムを使っていて、毎日注文データをCSVで出力して手作業で連携する必要がありました。

LOGILESSはこれを統合し、注文が入ると自動で倉庫に出荷指示が飛ぶ仕組みを実現しています。

ここがポイントとなるところです。

LOGILESSはAPI公開しているんです。つまり、自社のデータ分析基盤と接続できる。受注から出荷までのデータが自動で蓄積され、それをBIツールで分析できる。

これが、後のデータドリブンな物流最適化の土台になっていました。

LOGILESSの創業背景

ちなみに、LOGILESSの創業ストーリーも面白い。

創業者の足立直之さんは、楽天ブックスで3年間働いた後、2012年に会社を設立してEC事業を運営していました。その中でバックヤード業務の効率化のために社内ツールとしてLOGILESSを開発。それが2017年にSaaSプロダクトとして提供開始されたという経緯。

「自分たちの課題を解決するツールを作ったら、それが他社にも必要とされた」 というパターンですね。

データ分析基盤の内製化

LOGILESSのブログによると、ベースフードはLOGILESSのAPI連携を活用してデータ分析基盤を構築しています。

データの流れを図にするとこんな感じです。

graph LR
    A[注文データ] --> B[LOGILESS API]
    B --> C[データ分析基盤]
    C --> D[BIツール]
    D --> E[拠点配置の最適化分析]
    E --> F[座間・京都2拠点体制]

LOGILESSのブログには、ベースフードの担当者のコメントとして以下のような記載があります:

LOGILESSがAPI公開していて、自社データと繋げることで分析基盤が整ったことも経営の進化に大きく貢献できています。LOGILESSのAPIから取得したデータをBIツールに取り込むだけで、どこのエリアで、どのサイトから、どういう層の方が購入されているのかなどあらゆるデータが揃う。データ分析の結果は経営進化のために活用しています。例えば、出荷拠点の見直し。現在、ベースフードでは東日本と西日本にそれぞれ倉庫を構え、配送先のエリアによって自動で出荷元を振り分けているのですが、「倉庫を何県に設置すればよいか」「どこを境に東西に振り分けるのか」などのルールは、データ分析結果をもとに決めました。

つまり、LOGILESSで蓄積されたデータを分析基盤に取り込み、BIツールで可視化・分析。

その結果:

といったデータから、「東日本は座間、西日本は京都から出荷が最効率」 と自社で判断できた。

外部コンサルに年間2,000万〜3,000万円払うのではなく、自社で分析基盤を作って内製化したわけです。

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6名の少数精鋭エンジニアチーム

ここまで調べて、「こんな高度なデータ分析基盤、どれくらいのエンジニアチームで作ったんだろう?」と気になりました。

調べてみると、2022年時点で全社員80名超のうちエンジニアは6名

役割分担:

6名で、ECサイト運用、データ分析基盤、新規アプリ開発、物流拠点最適化を全て内製化している。

これには正直驚きました。

DeNA出身VPoE

さらに調べると、VPoEの煙草森直也さんはDeNA出身

代表の橋本舜さんと同じDeNA出身で、DeNAでゲーム開発をしていたときに一緒に働いていた(橋本さんがプロデューサー、煙草森さんがエンジニア)。

2020年1月に一人目のエンジニアとしてベースフードに入社し、エンジニア組織を構築してきました。

チームの特徴として:

と紹介されていました。

6名の少数精鋭で、外部コンサル費用(年間2,000万〜3,000万円)を削減しつつ、年間1,000万円以上の配送費削減を実現している。

これはすごいことです。

DeNAの人材輩出と南場智子の哲学

ここまで調べて、「やっぱりDeNAって人材輩出企業として強いな」と思いました。

ベースフードだけでなく、メルカリ、SHOWROOM、アカツキなど、DeNA出身の起業家は本当に多い。

「DeNAギャラクシー」 と呼ばれる起業家輩出エコシステムが形成されているそうです。

そして、その中心にいるのが南場智子さん。

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南場さんの哲学で特に印象的だったのが、「人の固定化は最大の悪」 という言葉。

普通の会社なら「優秀な人材は囲い込みたい」と思うところを、逆に**「出ていってOK、むしろ応援する」** というスタンス。

さらに、「ギリギリの仕事を任せる」 という方針。

DeNAでは、その人物が精いっぱい頑張ってできるかできないか、ギリギリの仕事を思い切って任せることにしている。人の成長は階段型。しばらく何も身動きできない苦しい時期がある。ところがそれを乗り越え小さくても成功したときはグンッと階段を上がるようにジャンプする。

この言葉、すごくすっと体に入ってくる感覚がありました。

「多様な優秀さ」という視点

南場さんのもう一つの重要な視点が、「多様な優秀さ」 です。

マッキンゼー時代、「優秀」の軸は主にロジカルシンキング(論理的思考力) だった。

しかしDeNAを立ち上げて気づいたのは、「会社はロジカルな人間だけでは少しも前に進まない」 ということ。

南場さんが認識した「多様な優秀さ」の軸:

説明
ロジカルシンキング 論理的に分析・構造化
感覚・センス 数字では測れない判断
人の心を掴む力 巻き込み力・交渉力
発想力 面白いこと・新しいことを思いつく
夢・ビジョン 大きな絵を描いて引っ張る
飛躍した思考 論理の積み上げではない突破口

そして、目指す姿として:

今まで強かった論理性や合理性を失わずに、エモーションや感覚の部分も開放していく。合わさると強い。例えば、「すごく直感的に発案された事業を、すごく論理的にやる恐ろしい集団」と言われたい。

この視点、すごく大事だと思いました。

エンジニア組織でも、技術力だけでなく、感覚・発想力・人を巻き込む力など、多様な強みを認め合うことが重要。

そして、南場さんが言う共通する性格的特徴:

自分が接したすごい人たちを思い浮かべると、なんとなく「素直だけど頑固」「頑固だけど素直」ということは共通しているように感じる。

なるほどと思いました。

まとめと内省

ベースブレッドのパッケージに記載された住所変更という小さな気づきから、以下のような発見がありました:

  1. 物流拠点最適化の内製化 - 外部コンサルに頼らず、データ分析基盤を自社構築
  2. LOGILESSの活用 - API公開により自社データと連携、分析可能に
  3. 6名の少数精鋭 - 適切な人材配置で高度な技術戦略を実現
  4. DeNA出身VPoE - ゲーム開発で鍛えられた技術力とビジネス観点
  5. 南場智子の人材哲学 - 「人の固定化は最大の悪」「多様な優秀さ」

特に印象的だったのは、「個の力」と「多様な優秀さ」 という視点です。

少数精鋭で成果を出すには、一人ひとりが高い技術力を持つだけでなく、ロジカル・感覚・発想力・人を巻き込む力など、多様な強みを発揮できる組織文化が必要。

そして、南場さんの「素直だけど頑固」「頑固だけど素直」という言葉。

他人の意見を聞きながらも、信念を持ってやり抜く。

これは、エンジニアとしてだけでなく、起業家としても大切な姿勢だと感じました。

たまたま食べたベースブレッドから、こんなにも深い学びが得られるとは思いませんでした。正直、調べ始めたときはここまで広がるとは思っていなかったのですが、調べれば調べるほど面白い発見があり、気づけばDeNAの人材哲学まで辿り着いていました。

「なぜそう判断したか」「どうやって実現したか」を深掘りすることの大切さを、改めて感じた調査でした。

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参考URL

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