最近、News Picsや他のメディアで「AI企業の電力消費問題」というニュースをよく見かけるようになりました。OpenAIが巨額の赤字を出している、データセンターの電力需要が急増している、といった話題です。

私自身、リフクラの開発でClaude APIを日常的に使っています。コードレビュー、文章の推敲、アイデアの壁打ち。AIの恩恵を多分に受けている立場です。だからこそ、その背後で何が起きているのか、ちゃんと理解しておかないとまずいんじゃないか。そう思いました。

そこで、Claudeに聞いてみることにしました。「AIの電力供給問題について、詳しく教えてほしい」と。

返ってきた答えは、想像以上に複雑で、そして重いものでした。


OpenAIもAnthropicも、実は赤字だった

まず驚いたのは、AI企業の収益構造です。

OpenAIの2025年予想売上は約130億ドルですが、コンピュートと技術者の人件費だけで売上の約75%を消費すると予測されています。さらに詳しく見ると、推論(実際のサービス運用)コストだけで、2024年に37.6億ドルを消費していました。これは当時の売上とほぼ同額です。そして2025年9月までには、その倍に達しているそうです。

Anthropicも同様です。2025年の予想売上は約22億ドルですが、キャッシュバーンは約30億ドル。つまり、売上を上回る規模のコストが発生している

ChatGPTの運用コストは1日あたり約70万ドル(約1億円)で、その大部分を電気代が占めているという試算もあります。GPT-3のトレーニングでは、コストの60%が電気代でした。

要するに、AI企業は現在、赤字経営なのです。


投資家は分かっていて賭けている

では、なぜ投資家は巨額の資金を投じ続けるのか。

調べてみると、投資家の間でも意見が大きく分かれていることが分かりました。

Goldman SachsやMorgan Stanleyなどの大手金融機関は、「これはバブルではなく実態を伴った成長だ」と主張しています。ドットコムバブル時と比較して、現在のAI企業の財務状況は健全で、実際の収益を生み出している、と。

一方で、多くの投資家とアナリストは深刻な懸念を表明しています。2025年8月、MIT Media Labの報告書によれば、企業向けAIに300〜400億ドルの投資がなされたにもかかわらず、95%の組織がゼロリターンだったという結果も出ています。

興味深いのは、投資家の関心が「AI企業そのもの」から「エネルギーインフラ」へとシフトしていることです。BlackRockが732社の顧客を対象に行った調査によれば、大手テック企業を魅力的な投資先と見なすのは調査対象の5分の1のみでした。一方、半数以上がデータセンターのエネルギーを有望と回答しています。

つまり、賢い投資家は理解しているのです。「AIのゴールドラッシュ」で儲けるのは、金を掘る人ではなく、道具や周辺サービスを提供する人だ、と。

ハーバードビジネススクールのAndy Wu教授は、こう表現しています。「OpenAI、Anthropic、xAIは金を掘っているが、Nvidiaはシャベルを売り、Metaは宝石商。Microsoft、Amazon、Googleは金掘りに固執していない」


8000年という時間の重さ

では、電力供給の問題はどう解決されるのか。

短期的には、SMR(小型モジュール炉)が注目されています。Google、Amazon、Microsoftなどが既に開発企業との電力購入契約を締結しており、2030年前後の運転開始を目指しています。従来の原子炉より小型で、データセンター近くに設置でき、安定した電源として機能します。

中長期的には、核融合発電が本命とされています。2025年は核融合の歴史的転換点となり、民間企業全体で既に80億ドル以上が投資されています。日本政府も2030年代の実証を目標に掲げました。核融合は、現在の原子力並みの価格で、事実上無尽蔵、安全、高レベル放射性廃棄物をほとんど出さない、という理想的なエネルギー源です。

しかし、ここに重要な問題があります。

従来の原子力発電から出る高レベル放射性廃棄物は、放射能が天然ウラン並みになるまで約8000年、ウラン鉱石レベルまで数万年かかるのです。

この問題は、完全には解決していません。

国際的には「地層処分」(地下300m以深の安定した岩盤に埋設)が最適な方法として認識されています。日本でも現在、北海道の寿都町・神恵内村、佐賀県玄海町で文献調査が実施中ですが、最終処分場は未決定です。

そして、この問題には激しい対立があります。

原子力発電を推進する側は、「現世代が処分の道筋をつけ、将来世代の負担をできるだけ小さくすることが世代責任だ」と主張します。

一方、日本弁護士連合会は2022年の決議で「長期にわたり強い放射能を有する高レベル放射性廃棄物は、現在の科学的・技術的知見では、日本において将来にわたり安全性を確保できる地層処分を行うことは困難である」と断言しています。

地球科学の専門家有志300名余も、「地殻変動帯に位置する日本の国土では、廃棄物を10万年にわたって地下に閉じ込められる場所を選ぶのは不可能」と声明を発表しています。

8000年という時間。地球の46億年の歴史から見れば一瞬ですが、人間の時間スケールでは想像を絶する長さです。

8000年前は縄文時代。エジプト文明もまだ存在していません。10万年前は、ネアンデルタール人の時代です。

この時間の長さを、どう受け止めればいいのでしょうか。


意思決定のプロセスを残すこと

対話を通じて、私が一番考えさせられたのは、この点でした。

現世代の問題を次の世代に持ち越さないという考え方にこだわる層と、長期間かけても問題解決できればいいと考える層。両方の主張があります。

私自身の考えとしては、イノベーションで解決できる見込みがあるのであれば、ある程度の時間をかけてもいいのかもしれない、と思います。太陽エネルギーは人類の需要の50倍以上を賄える潜在力があり、技術的には十分可能です。核融合も、順調に進めば2050年には実用化されるでしょう。

ただし、それには条件があります。

今を生きている私たちが、その時考えられる最善な方法をその時どのように考えていて、どのように意思決定をしたのかは後世に残しておく必要がある。それが責任だと思うのです。

これは、私が大事にしている「内省(リフレクション)」の考え方そのものです。ORIMDフレームワークでいえば、「D(決定)」にあたります。何を決めたか、だけでなく、なぜそう決めたか、どんな事実があり、どう解釈し、どんな意味を見出したか。

その記録を残すこと。将来世代が振り返れるようにすること。それが、現世代の責任ではないでしょうか。


意識を向け続けること

AIの恩恵のない時代には、もはや戻れません。

だからこそ、エネルギー問題に意識を向け続けることが大事だと思いました。

例えば、LLM1回の実行で何ワットの電気を消費したのか、可視化されるといいかもしれません。スマートフォンのバッテリー残量を気にするように、AIの電力消費を意識できるようになれば、使い方も変わるかもしれない。

投資家の中でも意見が割れている、という事実を知ること。簡単に答えが出る問題ではない、ということを認識すること。

すぐに答えは出ません。でも、問い続けることが大事だと思うのです。

あなたは、どう考えますか?


参考文献

SMR(小型モジュール炉)関連

核融合発電関連

高レベル放射性廃棄物・地層処分関連

太陽エネルギー関連

AI企業の財務・投資家の視点