今回のテーマは人と組織の成長モデルについてです。
人の成長とは何でしょうか?組織の成長って何でしょうか?
この記事では私が色々本を読んで学んできたことや、様々なチームで働いてきた経験、実際にマネジメントをしてきた経験の中で見えてきたモデルについて紹介します。
はじめに
こんにちは 悩みや不安を前向きな行動に変える内省の専門家のタカシユウトです。
組織論、特に内省についての研究をし、ウェブサービスの開発やワークショップの開催をしています。
このブログでは、日々学んでいる組織論や内省(リフレクション)の実践方法に関する情報、仕事で学んだことを不定期で掲載しています。また、エンジニアとしてキャリアを積んできた経験からITを使った自動化の情報等も掲載しております。
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人と組織の成長モデルについて
なぜこの記事を書くのか?
経営学者のヘンリー・ミンツバーグさんが「マネジメントとは、本来、『クラフト(=経験)』『アート(=直感)』『サイエンス(=分析)』の3つを適度にブレンドしたものでなくてはならない」ということをおっしゃっているのですが、私はこの考え方をかなり意識しております。そのため、人と組織の成長モデルについて記載する前に私の中のArt,Craft,Scienceについて簡単に説明いたします。
アート(Art):直感、感性、美意識、クリエイティブ、ビジョン、哲学
クラフト(Craft):経験則、職人、現実的
サイエンス(Science):分析、論理、科学、データ
アート(Art)
「人と組織の生産性を最大にしたい。そのためのメカニズムを明らかにしたい。」
これがアートの部分です。
生産性が高いということは幸福度が高まるということであり、少ないエネルギーでアウトプットが出せるので組織としてもエコだと捉えています。
クラフト(Craft)
次にクラフトですが、私は今までエンジニアとしての経験が長いのですが、その中で様々なチームの中で色々なリーダーを見てきました。また、マネジメントの経験を実際に積ませてもらう中で、先人の実践知として稲盛和夫さんや松下幸之助さんといった方の考え方に影響を受けており、特に下記のような本からインプットがされています。
サイエンス(Science)
最後にサイエンスですが、今回紹介する組織のモデルはティール組織や学習する組織といった下記の内容の影響を受けています。
人と組織の成長モデル
では、本題である人と組織の成長モデルについて紹介します。
私は人と組織の成長を次の図のように捉えています。
この図について下記の観点から説明していきます。
- 3つの軸
- アメーバと培養器
- 成長した先にあるもの
- 心をおろそかにしたらどうなるか
- どうすれば成長できるのか
- 最終的に組織はどうなるか
- 社会貢献を果たす組織の共通哲学
成長の3つの軸
私は人と組織の成長について3つの軸があると捉えています。
- 心:考え方、プラスとマイナスがある。
- 能力(技):ここの持っているスキル
- 気力(体):行動のエネルギー、モチベーション
心の軸、能力の軸、気力の軸が3つの軸ですが、心技体と置き換えてもいいです。また、図には表現されていませんが、心にはプラスとマイナスが存在しています。
稲森さんの言葉を借りるなら「考え方×能力×熱意」という表現になるかと思います。
アメーバと培養器
図の中に描かれている一つひとつがアメーバです。アメーバは個人の要素と、個人が集合した組織の要素があります。そしてアメーバの成長を支える培養器の役割として環境があります。
個人のアメーバ
一つ一つのアメーバ(個人)は自律的に心、能力、気力の領域を自律的に伸ばしていきます。このときのだんだんと右上のほうに進んでいくのですが、アメーバは伸び縮みしながら進んでいきます。
伸び縮みしながらというのがポイントで、成長は一直線には進みません。昨日出きていたことが今日出来なくなったり、心の状態や気力の状態についても上がったり下がったりしながらだんだんと右上の方に向かっていきます。
組織のアメーバ
組織のアメーバは個のアメーバの集合体です。このアメーバ同士は繋がり合っており、それぞれが相互作用を引き起こすことによって組織が成長していきます。
その中でも一気に組織の成長が引き上げられるタイミングがあり、それは組織の中で気づく力、感じる力を持つ人が出てきたときです。
イチローさんも同じような視点で語っています。
培養器としての環境
そして、組織のアメーバ、個のアメーバの成長を加速させるには適した環境が必要です。
環境の要素は下記のようなものだと捉えています。
- 文化
- 制度
- 働く場所
環境の中にこういった要素が正しく整っているとアメーバの成長を加速させる培養器の役割を果たしてどんどん成長が進んでいきます。
成長した先にあるもの
ではそれぞれのアメーバはどこに向かって成長するのでしょうか?
それは「真善美」だと思っています。
そして、一人ひとりが真善美を追求することによって組織はエコシステムとして機能するようになります。個人は組織という生命体の一部であり、組織もまた社会という生命体の一部として存在しています。そこではエゴは働いておらず、全てが繋がりの中で最適な振る舞いを取るようになります。
心をおろそかにしたらどうなるか
初めに心にはプラスとマイナスがあるということを触れました。では心の軸をおろそかにして心がマイナスに傾いたらどうなるのか。それは真善美の逆で、「偽悪醜」にたどり着きます。
偽悪醜の状態では嘘をつく、正しくないことをやる、妥協で済ませるといったことが至るところで発生します。そうして最終的に出来上がるのがエゴシステムです。
エゴシステムでは、自己中心的であったり、セクショナリズムが生まれます。
どうすれば成長できるのか
ではどうすれば、人と組織は成長していけるのでしょうか?
心の軸を伸ばすには?
心の軸を伸ばす際に大切だと考えていることは2つあります。
- 内省と対話
- 瞑想
内省と対話
内省と対話を繰り返すことによって、考え方がどんどん上向きになっていきます。 内省と対話については組織論においてもかなり研究されている印象があり、組織に適用するためのやり方も出てきている印象です。
なぜ内省と対話が大切なのかについては下記を御覧ください。
瞑想
もう一つ大切だと思うのは瞑想の習慣だと思っています。ただ、瞑想については様々なところで効果が言われて入るものの私の印象としてはまだまだ組織に適用できる研究は発達していないように思います。しかし、超一流と呼ばれているような経営者たちは瞑想の大切さに気づいていると思います。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、稲盛和夫さんも気づいていました。そして、Googleではマインドフルネス瞑想を組織で取り入れています。
瞑想についてはもう少し組織の観点からの研究が出てくるのを期待しつつ、実践レベルで研究していきたいと思います。
能力、気力の軸を伸ばすには?
能力と気力の軸を伸ばすためにはいかに没頭状態(フロー)に入れるかをマネジメントできるかがポイントだと思っています。
下記のページでフロー状態のマネジメントについての詳細を記載しておりますので、ご覧いただければと思います。
成長を加速させるためには
最後に人と組織の成長を加速させるために必要なことについてです。
- 環境が整っていること
- 文化が整っていること
- 仲間との信頼関係があること
これらが大事だと思っています。逆にこれらがと整ってないと、偽悪醜に向かうエネルギーが強く働いてしまうので、真善美に向かって成長する速度はかなり落ちてしまうのではないかと思っています。
最終的に組織はどうなるか
では今まで説明してきた人と組織の成長モデルの内容を続けたら最終的に組織はどうなるのか?次のような状態になっていくと思います。
- 全員が自律的に行動して最適な意思決定ができる組織
- 人と組織の成長を誘発する特性を持っている組織
- 一人ひとりが仕事に没頭でき、周りもそれを応援することができる組織
- 日々の経験から学び、未来に向けて正しい歩みをできる組織
こういった特性を持った組織になると思っています。これはいわゆるティール組織の状態だと言えると思います。
ティール組織についてはこちらに簡単にですがまとめたものがありますので、御覧ください。
社会貢献を果たす組織の共通哲学
私はティール組織に向かっていき社会貢献を果たす組織には共通の哲学があると思っています。
それは全員経営
という哲学です。
- アメーバ経営(京セラ 稲盛和夫)
- 社員稼業 (パナソニック 松下幸之助)
- 全員経営 (ファーストリテイリング 柳井正)
- 全員経営(ヤマト運輸 小倉昌男)
- 皆経営者主義(リクルート 江副浩正)
表現は違いますが、大きく社会貢献を果たして成長していく企業には全員経営
という共通の哲学があります。逆に言えばこの哲学を持つからこそティール組織に向かっていけるのだとも言えるのではないでしょうか?
そして、こういった哲学を持っている会社を一橋大学名誉教授の野中先生は「自律分散イノベーション企業」と定義しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここまで読んでいただきありがとうございました。長くなりましたが、これが私が考える人と組織の成長モデルです。
改めて内容をまとめますと次のようになります。
- 成長の軸は心、能力、気力の3つの軸がある。
- 真善美を目指して伸び縮しながら成長していく。
- 全員経営という哲学を持った組織がティール組織へと到達していく。
Appendix(付録)
「人の成長」と「組織の成長」について学びが深まるおすすめ書籍
最後に今回紹介しました書籍をこちらにまとめます。
松下幸之助 社員を夢中にさせる経営 「フロー理論」から最良の組織を考える
25年間「落ちこぼれチーム」を立て直し続けてわかった マネジャーとして一番大切なこと
ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル
なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる
成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法
U理論[エッセンシャル版]― 人と組織のあり方を根本から問い直し、新たな未来を創造する
「学習する組織」入門 ― 自分・チーム・会社が変わる 持続的成長の技術と実践
全員経営 ―自律分散イノベーション企業 成功の本質 (日本経済新聞出版)
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